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ファッションとしてのTシャツ

「アメリカ合衆国」という国はとても大きく、その広大な土地に移り住んできた様々な人たちを中心にして、ハリウッド映画、ベースボール、ハンバーガーなど様々な文化を生み、世界中に発信してきました。
そんななかで、アメリカの文化の象徴といえば?の問いをしたとき、その答えの上位にTシャツを挙げる人は決して多くはないと思います。
もちろん、アメリカには多くの特徴的な文化もあって、そっちに目がいっているものだとは思いますが、
それでも大半の日本人には、Tシャツは「インナーとしてもアウターとしても使いやすく、おしゃれもできる便利なシャツ」くらいにしか思われていないかと思います。しかし、それは意外と、コカコーラや、マクドナルドといった、世界中で「アメリカの象徴」と認知されているもの達にもひけを取らない「アメリカ文化」の一つなのではないでしょうか。

Tシャツとは、アメリカ人の着る普段着です。寒い冬などは別ですが、町行く人も大学の学生も、アメリカ人のカジュアルウェアはほとんど常に、Tシャツ。「Tシャツ、短パンにスニーカー」というスタイルは、最早アメリカの民族衣装と言ってもいいほど、このTシャツなるものはアメリカ人の間に浸透しているまでになっています。

今では私たち日本人は勿論、遠く中東やアフリカなどの人々の間にまでも普及しているTシャツですが、その発祥もやはりアメリカです。歴史の項でも触れましたが、Tシャツの原型はフランス軍服の下着で、その快適さから第一次大戦後に米軍が同じく軍服の下着として採用、大量生産されたのが始まりだそうです。五十年代にはTシャツを粋に着こなしたスターたちがスクリーンに登場し、大衆のアウターウェアとして普及し始めました。そして六十年代、生地に様々なプリントがされるようになったTシャツは爆発的な流行を見、世界に広まっていったのでした。

しかし、Tシャツがアメリカの「文化」たる所以は、単にそれがアメリカ発だからというだけではありません。というのも、アメリカのTシャツにはあまり他の場所では見られない「意味」があるのです。

例えば、アメリカのTシャツにプリントされている言葉を見てみると、地名、商業広告、政治プロパガンダ、思想的な主義主張から、人をおちょくるような文言まで、まさに多種多様。

「ミネアポリス」、「減税+小さな政府=さらなる自由」、「ミルク飲んだ?」、「資本主義者」、「オレの唇は喋り続ける…」、「石油のために血はいらない」等々…。

日本のTシャツにも色々な言葉が並んでいますが、その書かれている「意味」を強く意識しながらTシャツを着ているのがアメリカ人です。もちろん、全てがそうだと言う事ではありませんが、例えばイラク戦争への皮肉を込めた「石油のために血はいらない」という言葉は「反戦」という意思の表明ですし、「資本主義者」に至っては、「私は資本主義者です」といったあからさまな宣言をしているようなものです。

では、アメリカ人はどこまでこのTシャツの「意味」に対して本気なのでしょうか。
「平和Tシャツを着ていた男が逮捕された」という事件は、ニューヨークのある商店街で起こりました。ある男性が「平和へのチャンスを」と書かれた反戦Tシャツを着ていると、それを「公共の場に不適切」と判断した警備員からそれを脱ぐよう指示を受けたが、その指示を拒否して逮捕されてしまったという事件が起こりました。逮捕の直接の理由は「警備員の指示に従わなかったから」との事ですが、警備員の行動に対しては言論の自由の侵害だとする非難の声があがり、二日後には反戦団体による抗議デモまで起こったそうです。

これには、Tシャツの文字など単なるファッションでしかない日本人感覚で見ると、とても考えられないことの様に思えます。
日本では、どんなメッセージを胸に記したTシャツを着ていても、大半の人は意味すら分かっていないことが多いと思います。

しかし、ここまでくると、アメリカ人がTシャツに託している本当の「意味」が見えてくるのではないでしょうか。少し大げさかも知れませんが、アメリカのTシャツが持つ本当の「意味」とは、アメリカをアメリカたらしめる言論の自由 の文化といってもいいでしょう。

「Tシャツを着たアメリカ人」は、主張する自由を謳歌しようとしています。実はこれこそ、Tシャツが「アメリカ文化」といわれる所以なのであります。

Tシャツ男